今は廃刊となっている『月刊ニューサイクリング』誌の2013年6月号に掲載された作品です。
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■ Hill of Tara
僕たちがアイルランドに魅了されたのは、そこが自転車ロードレース界の伝説、ショーン・ケリーの母国ということだけではなかった。当時、そして現在も僕たち夫婦はシンプル&スマートな暮らしを目指している。僕たちの究極の暮らしを一言で言えばこうだ。
「何も無いけど全てある。」
そんな暮らしのヒントをアイルランドに求めた。西の果ての慎ましやかな緑の島、アイルランドは、歴史を見れば幾多の他民族の侵略を受け苦渋を味わってきた。それでもケルト民族の末裔たちは現在まで生き続けてきた。『風と共に去りぬ』の主人公、スカーレット・オハラが、最後のシーンで言っていた。
「皆去ってしまって、全てを失った。でも私にはまだ残されたものがある。私が立ち上がることのできるこの大地が。そうだ!タラを、タラの地を目指そう。」
スカーレットに限らず、たとえ何処かの町に大津波が押し寄せて全てを拭い去ったとしても、それでも大地はそこに毅然と存在する。僕たちはアイルランドにライフスタイルのヒントを求めていたのではない。僕たちは、「生きることの素地は如何にあるべきか」、そのためのヒントを求めていた。
タラの丘[2005年]
※ 口絵、および前編はこちらをご覧ください。
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