今は廃刊となっている『月刊ニューサイクリング』誌の2013年5月号に掲載された作品です。
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限られた条件の中で
時が流れ、ロードバイクの世界では多段フリー(*1)化、STI変速(*2)、そして電動変速と物凄いスピードで機材が進化し、今も進行中である。部品のコンポーネント化によって、どこか一部を取り替えたいと思っても、全体を一緒に交換しなければパフォーマンスを維持することができない時代になった。
一つ一つの部品のコストも以前より高くなってきたようで(正確に言えば、ハイエンドの部品の価格が特に高くなってきていると思う)、一般ユーザーがロードバイクを維持していくだけでも大変になってきた。少なくとも僕はそうである。何か経済のカラクリに個人が翻弄されているような感さえ覚える。
そんな状況の中で、ふと僕のフィクスドバイクを眺めれば、それは日進月歩の機材進化の流れに全く取り残された、というよりも変化することを自ら拒み続けてきた、云わばFIXEDな頑固者の姿があった。この頑固者はめっぽうランニングコストが低い。且つメンテナンスが容易で工具も少なく済む。こういうのを「ネオ・シンプル」とでも呼べばよいのだろうか。
巷には便利なモノが溢れている。変速機もその一つ。且つ、その便利なものを所有できない立場でもない。欲しいと思えば手に入れることも可能だ。しかし敢えて、積極的に所有しないという姿勢を維持する。そのような意味で「ネオ・シンプル」。
20世紀までは、できるだけ多くのモノを所有することが豊かさのスタンダードだったようだ。しかし21世紀の今は違うと思う。これからはモノに束縛されない、モノに振り回されない自由度が豊かさの指標だ。自由(FREE)を感じる具象物が固定ギア(FIXED)というのもパラドックスで面白いと思うんだけど。
フィクスドバイクは、19