■ 暖簾についての追記 by T
2017-07-04


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妻が書いた暖簾についてのブログに付け加えます。

私たちは横移動のカーテンに当初から抵抗感を持っていました。話は約20年前のドイツ旅行に遡ります。

1996年から1997年にかけて年末年始のドイツを旅行しました。マイナス10度以下のクリスマス。窓辺を可愛く装飾した家々が立ち並び、そのほとんどがカーテン無しで室内も丸見えでした。夜も長く昼も薄暗いので外から室内がより観察できたということです。聞くところによればドイツ人にとってそれは想定の範囲内。外を歩く人から室内の家具、装飾を観られてもいいように、日頃から気合を入れてインテリアにこだわるということでした。絨毯一枚を買う際にも家族会義で選び抜くということでした。そんな真剣勝負のインテリアですからカーテンで見えないようにするなんて言語道断。

別に見られてもいいんだ。カーテンを付けたくなかったら付けなくていいんだ。私たちのカーテン嫌いをドイツ人に共感してもらえたようで嬉しかった記憶があります。

カーテン無しの数年を経過して、暖簾(のれん)を提げるに到った理由は妻が書きました。

暖簾は日本古来の寝殿造りに見られるような御簾(みす)や几帳(きちょう)のように縦に下げます。かつ移動可能です。設置方法も極めてシンプル。横棒に布を垂らすだけ。妻戸のような観音開きのデッキへの出入り口に垂らされた暖簾が揺れるとき、まるで風が生き物のように見えてきます。見えない風を視覚化できるのです。そしてその風は平安時代もさらに遡り、遥か太古から吹いている風なのです。

写真家の故星野道夫さんはエッセイに書いていました。「風は太古の生き物の化石である。」

有機物である自分もいずれは二酸化炭素と水蒸気となって風に同化する存在。暖簾はそんなメッセージを送ってくれます。
[by T]
[家づくり/House]

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